本シリーズ記事では、ブロックチェーンビジネスのノウハウを体系的に学ぶことができます。第4章では、企業向けブロックチェーン概要と、特徴として最も重要な「秘匿データのやり取り」について学ぶことができます。
2024年「ブロックチェーンビジネス・アドベントカレンダー企画」5日目の記事です。 関連企業の皆様にも記事を書いていただく予定ですので、是非お立ち寄りください!
はじめに
第4章では説明していきます。「では実際に、どの企業ブロックチェーンを活用すればいいの?」という点を解説してきます。
ちなみに、第3章では、
BCビジネスパターンは組み合わせで考えよう
BCビジネスパターンを踏まえた活用アイデアの考え方は4つ
- 業務効率化:相手とのやり取りに改善の余地がある業務は何かないか?
- デジタルアセット:権利化して売買できそうなものはないか?
- 公正記録:不正が発生する余地はないか?もしくは証明したいことはないか?
- 付加価値:記録データを読み取ることで新たなビジネスに活用できないか?もしくはコストの壁によって実現できなかったことをBCで実現できないか?
特に、付加価値はもっと考えれば、たくさんアイデアが出てくるはず
でお伝えしてきました。
企業にとっての秘匿データとは?
例えば、会社の中で以下のデータや業務プロセスが全参加者に共有できそうでしょうか?
- ①企業の保有資産
- 預金残高
- 商品の内部情報(材料表、レシピなど)
- 保有株数 など
- ②相手先の企業と取引する際の、契約条件
- 単価、数量
- 信用余力
- 支払条件 など
- ③相手先の企業と取引する際の、内部業務プロセス
- 例:銀行側が融資する際の融資先企業の与信調査プロセス
- 例:購入した在庫の捌ける見込みの算出プロセス
・・・こうして考えてみると、これらのデータやプロセスを参加者全員に共有することは難しいと感じるかと思います。これらの企業のデータやロジックは”安易に開示するデータ”ではなく、基本的には「秘匿データ」として扱うべきものです。例えば、②契約条件が開示されていると、他の契約先から「なぜうちとの契約だけ単価だけ高いの?」と言われてしまう可能性があり、契約条件は当事者同士だけの秘匿な情報にしておきたいはずです。
このように、企業同士の取引に関わるほとんどの情報は基本的には第三者に見せるべきではなく、秘匿データとして扱うことが必要になります。
企業にとっての開示データ
「基本的には第三者に見せたくない」一方で、企業が情報を開示しなければならない場面もあります。例えば、「自社製造のフライドチキンの秘伝のスパイス情報は秘匿ですが、規制されている材料は確かに使っていない!」ということ証明するようなケースです。このような場合、企業にとって最も嬉しいのは、「秘匿データと開示データを柔軟にコントロールできること」になります。
企業向けブロックチェーンとは?
企業にとっての秘匿データの重要性についてご理解いただけたかと思います。まさにこの秘匿データを扱えることが企業向けブロックチェーンの特徴となるのですが、そもそも「企業向けブロックチェーン」について馴染みのない方もいらっしゃると思いますので、次に、ブロックチェーンの類型について説明していきます。
企業向けブロックチェーンの種類
ブロックチェーンは一般に以下の図のように分類されます。
参加者が特定可能かどうか
まず、許可型・非許可型(permissioned/permissionless)というのはブロックチェーンネットワークに参加する際に許可が必要かどうかという基準で、企業向けの使い方として基本的には、参加企業が誰か特定できている前提で企業間取引を行うために、許可型が採用されることが多いです。
次に、ネットワークに関して、Bitcoin, Ethereumなどのパブリックチェーンでは世界に唯一のネットワークがある一方、企業向けブロックチェーンは基本的に、事例ごとにネットワークを持ち、関連するステークホルダーによって運用されています。
秘匿/開示データの扱いはどうなっているか
そして、秘匿/開示データの扱いに最も特徴的な違いがあります。パブリックチェーでは全ての参加者に公開する開示データとして扱う一方、企業向けブロックチェーンでは、閉じられたNWの参加者だけで共有したり、当事者だけで秘匿データを扱う機構が備わっていたり、など開示範囲を制限していることが特徴です。
Cordaの特徴
ここからは、弊社の扱う企業向けブロックチェーンである「Corda」の特徴を説明していきます。
Cordaとは?
Cordaは世界の大手金融機関が共同出資しているR3社が、1から作り上げた企業向けブロックチェーンです。企業向けブロックチェーンですので先ほどのご説明した通り、許可型のネットワークであり、事例ごとにネットワークをステークホルダーで共同運用する形になります。
Cordaは特にプライバシー(秘匿データの扱い)を重視した仕組みを持っていますが、第2章で説明してきたようなブロックチェーンの利点を引き継ぎつつ、かつ企業にとって重要なプライバシーを両立していることのが、Cordaの一番の強みです。この仕組みについて、パブリックチェーンとの違いに触れつつ、もう少し掘り下げて説明していきます。
仕組み①:当事者同士で秘匿データのやり取りが可能
パブリックチェーンでは、全員に見られている状態での取引が基本となりますが、一方Cordaでは、当事者同士でのみ取引を行うため、第三者からはその取引の存在を認知できないという特徴があります。そのため、図のA社とB社は秘匿データのやり取り(通常の企業取引)が可能となります。
技術的には、この当事者間での取引する仕組みだけだと実はブロックチェーンとは呼べません。なぜなら「二重支払いの防止」について解決していないからです。Cordaではそれを解決している「Notary」と呼んでいる仕組みによってブロックチェーンとして成り立っていますが、詳しくは、👁️🗨️Notary のタグ記事一覧をご参考ください。
仕組み②:秘匿データと開示データを柔軟にコントロール可能
パブリックチェーンでは、取引データを全員で共有することになりますが、一方Cordaでは、取引データの共有相手をコントロール可能です。基本的には、当事者同士で取引データを保管し合うことになりますが、特定の誰かに開示することも可能です。取引データを共有する特定の誰かというのは、事例によって大きく変わるので、時には検閲する公共機関だったり、時には参加者全員ということもありえます。「企業が情報を開示しなければならない場面で、適切に開示するために、秘匿データと開示データを柔軟にコントロールできる設計になっていること」が重要なポイントです。
まとめ
秘匿データの重要性と、ブロックチェーンの類型、Cordaの特徴について説明しましたが、いかがだったでしょうか。メッセージを簡潔にまとめます。
企業同士の取引に関わるほとんどの情報は基本的には第三者に見せるべきではなく、秘匿データとして扱うこと
企業にとって最も嬉しいのは、「秘匿データと開示データを柔軟にコントロールできること」
ブロックチェーンの利点を引き継ぎつつ、かつ企業にとって重要なプライバシーを両立していることのが、Cordaの一番の強みです。
BC活用に向けた具体的なアクションプラン
- 自社の中で、秘匿すべきデータと開示すべきデータの区別を考えてみる
- どのような開示データがあると、業界の風通しが良くなりそうか考えてみる
次が最後の章になります。最後は、これまでの全ての章の話を全て踏まえつつ、ブロックチェーンビジネスの展開の仕方について説明していきます。
次のシリーズ記事はこちら
<ご質問・ご要望の例>
- Corda Portalの記事について質問したい
- ブロックチェーンを活用した新規事業を相談したい
- 企業でのブロックチェーン活用方法を教えて欲しい 等々
SBI R3 Japan ビジネス推進部 🐾
投信PdM/不動産PdM/Cordaトレーニング/Blockchain Workshop運営など
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