本シリーズ記事では、ブロックチェーンビジネスのノウハウを体系的に学ぶことができます。第2章では、ブロックチェーンはどのようなビジネス価値を持っているのか、について説明します。第2章の後半では、ブロックチェーンの利点を企業目線で説明します。
2024年「ブロックチェーンビジネス・アドベントカレンダー企画」3日目の記事です。 関連企業の皆様にも記事を書いていただく予定ですので、是非お立ち寄りください!
はじめに:企業のBC活用は両輪で考えよう!
第2章前半では、赤い方の「分散化する意義」について説明しました。第2章後半では「ブロックチェーン的なビジネス価値」は対改ざん性や二重支払いの防止など、よく説明されているブロックチェーンのメリットを改めて”企業目線”で説明していきます。
後半:ブロックチェーンのビジネス価値
第1章から、「分散化」について説明を進めてきましたが、この「分散化」を目指した結果、世に生み出された「ブロックチェーン技術」では、いくつか副次的なメリットも多く兼ね備えています。ここからは、皆様もよくお聞きになる、ブロックチェーン技術のメリットを企業目線でギュッと絞ってビジネス価値を3つ説明していきます。
そもそもブロックチェーンとは・・?
様々なブロックチェーンの説明は世の中に多くありますので、詳しくはそちらを見ていただくとして、簡単にどういう技術かを説明すると、ブロックチェーンとは「他者同士で取引履歴を共有することで、取引の信頼性を担保する技術」です。そのため、自身だけで使っても特に意味はありません。
利益が相反する企業同士を前提に使える
ブロックチェーンの技術の意味合いをもう少し企業目線で具体化してみしょう。「他者同士で」と説明しましたが、これは実際には「他社」を意味する場合が多く、企業同士が分散している中でデータをやり取りしていくことになります。
また、「取引の信頼性を担保」と説明しましたが、これは「利益相反が発生する企業同士」という前提の中での取引の信頼性の担保を意味しています。信頼できる仲間内であれば、分散化してまで取引の信頼性を担保することを目指す必然性が薄れてきてしまうためです。利害が相反する一方で、互いに正しい情報が欲しい状況は存在しており、例えば、「お金のやり取り」はまさにその典型例です。
まとめると、ブロックチェーンとは「他者同士で取引履歴を共有することで、取引の信頼性を担保する技術」であり、企業向けには「利害が相反する企業同士」で特に活用されることになります。
「利益相反」の形の一つに「ガバナンスが異なること」も含まれます。例えばグループ企業の子会社でも会計が独立していたり外部の株主がいたり等の理由から、利益相反が発生する場合もあります。子会社同士でも異なるガバナンスを持ち合わせている場合は、BC活用を行った方が有用なケースもあることは抑えておきましょう。
有限の資産としてデータを扱える
次にブロックチェーンの技術的に知っておきたいポイントが2点ご紹介します。
1つ目:電子署名
「電子署名」とは「自身がデータを作成・更新したことを保証する技術」ですが、これは一般的なIT技術で、例えばPDFが書き換えられないのようにする、などの用途でよく使われるものです。ブロックチェーン上では、誰かとデータのやり取りをするための本人確認やデータ作成・更新内容の証明に使われます。
一見、この電子署名によって改ざんが不可能なようにも見えますが、電子署名だけでは「データの変遷の時系列が分からない」ことが問題になります。例えば、100万円で双方署名した契約書と、その後200万円に金額修正し双方署名した契約書の二つがあった場合、もちろん最新版は後者の契約書ですが、どちらも双方の電子署名が入った契約書ですので、過去に100万円の署名した契約書を使って悪巧みすることも可能でしょう。(100万円が最新版だ!とシラを切ったり、100万円の方で会計を計上したり等・・)
2つ目:二重支払いの防止
この問題を解決しているのがブロックチェーンです。ブロックチェーンをブロックチェーンたらしめているのはこの「二重支払いの防止」です。時系列でデータの変遷を追うことによって、同じデータが2回使われる状況を防止しています。二重支払い(二重使用)を防止できると、「100万円で双方署名した契約書データは無効になり、200万円の方の契約書データが有効にする」ことが可能になります。
加えて、「2回使うことができないので、(お金のように)有限の資産として扱えること」もポイントです。送金を例にすると、「Aさんは100円しか持っていないのに、100円をコピーしてBさんとCさんにそれぞれ100円ずつ送金することが技術的にできなくなった」というわけです。(そしてこれを分散化した形で実現したのがブロックチェーンの発明です。)
そして・・・
「”お金以外のデータ”もコピーできない有限の資産として扱えること」
を重要なポイントとして抑えていただくと、この後の企業のBC活用の話がグッと身近に感じられるようになるでしょう。
ブロックチェーンの利点
ブロックチェーン技術の根幹を抑えた上で、次にビジネス的にどのような価値(利点)があるのか見ていきます。ここで紹介する利点は、第3章でご紹介する事業化の形(パターン)につながるものにあって今
利点① WYSIWIS (What You See Is What I see)
さて、これまで説明したブロックチェーンの性質により、「WYSIWIS」という概念が実現できるようになりました。これは「What You See Is What I see(あなたが見たものは私が見たもの)」の略称で、ここでは「複数の企業同士が必ず同じデータを確認できている状態」を指しています。WYSIWISが実現できることによって以下のメリットが得られます。
- 最新データを常に共有・更新できる
- 不整合が原理上発生しない
これは企業の実務目線で見てみると、実はかなり嬉しいポイントとなります。WYSIWISによって、企業同士の様々な確認・照合作業が軽減できることが想像できるでしょう。
そして、このWYSIWISを前提に、「さらに発展的なデータ連携を発展できるんじゃないか?」というのが、残り二つのビジネス価値になっていきます。
利点② ワークフローの効率化・自動化
次に、「企業同士の企業を跨いで行われる共通の定型的なワークフロー」にもブロックチェーンを適応することができ、その結果として以下のようなメリットを得られます。
- 企業同士の業務フローが自動化
- 価値(金銭、所有権等)の移転も可能
業務フローが自動化されると、統一されたフォーマット上で、企業同士の合意以外の確認や照合作業が不要になります。。
価値移転に関してBC上でお金に相当するデータを扱えば、「取引と決済を同時に実行することができること」や、「商流・物流・金流など、企業の中で別領域として存在していた流れを一つに統合することができること」のが企業にとっての嬉しいポイントになります。
利点③ 記録データの証明・活用
最後に、そもそもこれまで共有してこなかったデータが可視化できるようになり、その結果として以下のようなメリットを得られます。
- データの追跡や証明ができること。(=トレーサビリティ)
- データの証跡から分かる新事実がビジネスに活用できること
二つ目は新事実と抽象的に書いてますが、新規ビジネスに繋がるインパクトを持つ可能性があることが嬉しいポイントです。例えば、ファイナンスの文脈では取引履歴から新事実(=信用情報)が分かることで中小企業の融資条件を緩和させることができますし、サプライチェーンの文脈で取引履歴から新事実(=より詳細な素材表・加工履歴)が分かることで、規制対応をスムーズに適応することができるかも知れません。
これまで共有してこなかったのは、「信用に足るデータではなかった」「記録コストや取得コストが高かった」「記録ミスによるリスク」など様々な原因が考えられますが、企業同士でBC活用することによって、新たに共有可能なデータによって、新たなビジネス開拓ができるようになるでしょう。
まとめ
以上、企業目線でのブロックチェーンの利点で説明をしましたが、いかがだったでしょうか。お金以外のデータにもBC活用できるというのが理解できると、グッと活用の可能性が広がっていきます。簡潔にと以下にメッセージをまとめます。
- 企業向けのBC活用では、利害が相反する企業同士で取引することが前提
- お金以外のデータもコピーできない有限の資産として扱える
- 利点①:WYSIWIS (What You See Is What I see)
- 最新データを常に共有・更新できる
- 不整合が原理上発生しない
- 利点②:ワークフローの効率化・自動化
- 企業同士の業務フローが自動化
- 価値(金銭、所有権等)の移転も可能
- 利点③:記録データの証明・活用
- データの追跡や照明ができること。(=トレーサビリティ)
- データの証跡から分かる新事実がビジネスに活用できること
BC活用に向けた具体的なアクションプラン
- 自社の中で念入りなチェックが必要な業務を洗い出してみる
- 相手企業とのやり取りの中での不満を洗い出してみる
- 業務の中で可視化できたらビジネスに繋がりそうなデータは何か考えてみる
さて、第2章では前半後半に分けて、企業がBC活用をする上での意義や利点を要素ごとにみてきましたが、次章ではこれらをパターン化した上で事例を紹介することで、実際にどうビジネス化できるかのイメージを膨らませてみましょう。
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