本シリーズ記事では、ブロックチェーンビジネスのノウハウを体系的に学ぶことができます。第2章では、ブロックチェーンはどのようなビジネス価値を持っているのか、について説明します。第2章の前半は企業と分散化の関係性を説明します。
2024年「ブロックチェーンビジネス・アドベントカレンダー企画」2日目の記事です。 関連企業の皆様にも記事を書いていただく予定ですので、是非お立ち寄りください!
はじめに:企業のBC活用は両輪で考えよう!
第1章では、
「生殺与奪を他人に握らせるな!!」
という分散化の根底にある考え方のもと、
「インターネットに限らず、様々な要素が今後、分散化していくだろう(すべきだ)」
企業や業界の抱く社会課題に対して「分散化」による新たな解決策を試みていこうとするスタンスが重要です。
「ビジネスの根幹を他社に任せるな!!」
という内容で説明してきましたが、
「結局、企業がどういう問題にどのように取り組めばいいか分からないじゃないか!!」
という疑問を解消するために、本章では、企業がブロックチェーンを活用する上での利点やビジネス的な価値について、企業から見たBC活用の価値を両輪で説明していきます。
弊社が日々向き合っている疑問の中でも特に、
「それ、ブロックチェーンじゃなくていいじゃない?」
と聞かれる場面が多いのですが、この疑問のアンサーとなるのが第2章前半で紹介する「分散化する意義」だと考えています。ここでは、第1章で説明した「ビジネスの根幹」を他人に任せてしまうと何が起こってしまうのか、分散化すると何か良くなるのか、を整理しています。
一方、第2章後半で説明する「ブロックチェーン的なビジネス価値」は対改ざん性や二重支払いの防止など、よく説明されているブロックチェーンのメリットを改めて”企業目線”で説明していきます。
それでは、前半「分散化する意義」について説明を進めていきます。
前半:企業にとっての分散化する意義
他社に任せてしまいそうになるビジネスの根幹とは?
第1章では、企業にとっての分散化とは「ビジネスの根幹を他社に任せるな(生殺与奪の権を他人に握らせるな)」とまとめました。「ビジネスの根幹」とひとくちにいってもビジネスモデルや人材、ビジョンなど様々な要素がありますが、ここでは、プラットフォーム構築の観点に絞り、「他社に任せることはせずに、分散化した方が望ましい要素」を3つ説明します。また、これら3つは実際に他社に任せてしまうケースもあり、●他社に任せた結果何が起こるのか、●分散化しているとどう嬉しいのかも一緒に確認していきます。
①運用体制の分散化(意義:サービスの継続性の向上)
まず、1つ目の運用体制の観点では、「サービスの継続性」に分散化する意義があります。経営とシステムの二つの観点があり、経営面での運用体制では、運用企業は倒産するとサービス提供も止まってしまいますが、「業界全体で使っているサービスが止まると、各企業は何もできなくなる・・」など、見落としてしまうようなリスクが潜んでいるかもしれません。その場合は、企業同士の共同運用が解決策となることがあります。
一方、システム面での運用体制は、一つの運用企業のサーバーがダウンしてもサービス全体が継続することを実現するには、分散化されたシステムが解決策となることがあります。
②データ管理の分散化(意義:データ主権)
次に、2つ目のデータ管理の観点では、「データ主権」に分散化する意義があります。昨今のデータ保護規制(GDPRなど)では、個人データの扱いを厳重にせよという規制がありますが、同様に企業の情報も重要で他社に任せるにはリスクの高い情報も多いです。この場合は、中央集権的ではなく分散的に、自身の秘匿情報は自身で管理することが解決策となります。
例えば、「契約情報」「得意先に対する異なる単価設定」などの情報を、サプライチェーンの下流に知られると、足元を見られてしまう場合もあるかもしれません。しかし、上流の企業が自社でこれらの情報を適切に開示管理できれば、足元を見られない交渉が行えるでしょう。
※企業同士が秘匿情報をどう開示していくか、についてはブロックチェーンビジネスにおいて特に重要なテーマなので、第4章で説明を行なっています。
③意思決定の分散化(意義:独立した意思決定)
3つ目の意思決定の分散化は、「独立した意思決定」に分散化する意義があります。あるプラットフォームで第三者(サービス提供者)が権威や独占的地位を強めてしまうと、そのプラットフォームしか選択肢がない状況に知らず知らずのうちに追い込まれていることがあります。こうなると、一方的な方針変更を受け入れざるを得ない状況になってしまいます。その場合は、ブロックチェーン技術は関係なく極めて政治的な話ではありますが、個々の意見が尊重される体制をうまく構築することが解決策となります。(企業同士で運用する分散システムと言うベースがあれば、政治的な分散も比較的進めやすいかもしれません。)
業界内でBC活用を進めるには、結局は企業同士でうまく協力できるかどうかがカギになります。そして、「担当者の熱意・リーダーシップ・企業間調整力」や「何かしらの外圧(新規制の導入、業界内で大きな不正の発生等)」が組み合わさると話が前に進んでいくことが多いように思います。
まとめ
企業にとっての分散化する意義の説明は以上です。メッセージを簡潔にまとめると、
- (継続性)業界全体で止まってはいけないシステムを任せっきりでいいのか・・?
- (データ主権)重要な企業情報を他社に握られてないか・・?
- (独立した意思決定)いつの間にか他社に従わざるを得ない状況になっていないか・・?
このような状況において、分散化が解決策となる可能性が出てくると思っています。
今回ご紹介した3つの分散化する意義の他にも、企業や業界にとって分散化する意義が見つかることもあり、例えば、ここでは触れていない意義の一つとして「国を跨ぐビジネスでは、各国の規制を満たすために分散的な運用体制が有効だ」というテーマもあります。
BC活用に向けた具体的なアクションプラン
- 3つのメッセージを踏まえ、それぞれ考えてみる
- 他社に任せすぎている部分があれば、自社にとってどのようなリスクが起こり得るか考えてみる
「中央集権による弊害」というのは、企業であれど意外と気づきにくいものです。そして、問題が発生してからでは手遅れ、ということも多いのではないでしょうか。
逆転の発想として、(問題が表面化する前に)その問題にいち早く気づき、解決したシステムが構築できれば先行者メリットが大きい。ということでもあります。
(筆者的には、最近のニュースで流れる企業の不正・事故などを見ていると、前もってブロックチェーンを導入していれば防げたのでは?と考えることもしばしば。)
第2章の前半は以上です。第2章の後半では、皆様もよくご存知のブロックチェーンのメリットを企業目線で説明していきます。
次のシリーズ記事はこちら
<ご質問・ご要望の例>
- Corda Portalの記事について質問したい
- ブロックチェーンを活用した新規事業を相談したい
- 企業でのブロックチェーン活用方法を教えて欲しい 等々
SBI R3 Japan ビジネス推進部 🐾
投信PdM/不動産PdM/Cordaトレーニング/Blockchain Workshop運営など
シュナとスマートホームが好き