本シリーズ記事では、ブロックチェーンビジネスのノウハウを体系的に学ぶことができます。第5章では、企業向けブロックチェーンを使ったビジネスの発展系を見ていきます。
2024年「ブロックチェーンビジネス・アドベントカレンダー企画」6日目の記事です。 関連企業の皆様にも記事を書いていただく予定ですので、是非お立ち寄りください!
はじめに
最後に、第5章ではよくあるブロックチェーンビジネスの進め方や発展形について説明していきます。
ちなみに、第4章では、
企業同士の取引に関わるほとんどの情報は基本的には第三者に見せるべきではなく、秘匿データとして扱うこと
企業にとって最も嬉しいのは、「秘匿データと開示データを柔軟にコントロールできること」
ブロックチェーンの利点を引き継ぎつつ、かつ企業にとって重要なプライバシーを両立していることのが、Cordaの一番の強みです。
という内容で説明しました。
競争領域/協調領域
ブロックチェーンビジネスの話を始める前に、一般に各業界に存在している2つの領域について説明します。
競争領域とは、「競合他社の中での優位性があり、企業の利益に直接つながる領域」を指しています。ブランディングや研究開発など、特に企業が差別化を図っていきたい部分だと思っていただければ問題ありません。
一方、協調領域は、定型的な業務や規制への対応など、競合他社の中でどの企業も共通してやらなければならない領域を指しています。どの企業も皆同じように困っているはずで、差別化もできない領域なので、本章では、「企業同士で協力できる可能性がある領域」という意味で、単に非競争領域ではなく、ここでは協調領域と呼んでいます。
BC活用によって、競争領域と協調領域が共存できる
データそのものの価値が非常に高まっている昨今では、企業としては安易に第三者に開示したくないニーズが非常に高くなってきています。
このような状況では、仮に協調領域として企業同士で協力できそうだった業務も、競争領域として認識され他社と協調すべきではないという判断がされる可能性があります。例えば、自社の商品に規制された材料が使われていないことを証明する必要があるが、商品のノウハウが流出しそうな可能性があれば、他社との協調を躊躇することになるでしょう。
このような状況を脱するためには「企業の利益を守りつつ競争領域と協調領域が共存できること」が重要なポイントです。第4章では「秘匿データと開示データを柔軟にコントロールできること」の重要性を説明しましたが、実はこれは、企業の利益を守り、利益相反する企業同士が協調することを受け入れやすくするための工夫となっています。特にCordaでは、このデータコントロールの柔軟性を強みとしています。
進め方①協調領域の業界プラットフォーム
ここからは、BCビジネスの典型的な進め方を2パターンご紹介します。
まず一つ目の進め方は、競争領域・協調両機の共存する典型例として、競合企業同士で協調領域のプラットフォームとして推し進めることが、ブロックチェーンビジネスの本丸になります。
成功の鍵は「同じ課題意識の下、どれだけ競合企業を巻き込めるか」
特に利益相反の強い競合企業を巻き込むには、どのような社会課題の解決を目指し、どのようなデータを連携して、どのようなメリットをもたらすのかを、しっかり整理した上で、熱量を持って巻き込んでいく必要があります。
ビジネスの発展先は様々
業界プラットフォームのビジネス発展方法を2つご紹介します。
一つは、「規制当局との巻き込みやグローバル連携」で、政府と協力しグローバル展開を視野に入れることができるので、ガラパゴス化しないプラットフォームづくりを推進できます。
次に、「デジタルアセット・マーケット化(第3章で解説)」です。業界プラットフォームで扱うデータや現実に紐づいたアセットを実際に売買できるような市場ができると、より収益を得られやすくなったり、業界全体が活気づくような影響を与えたりできるでしょう。
収益の源泉は?
通常のサービスですと、サービス提供側と利用ユーザー側で明確に分かれることが多く、収益構造はシンプルです。一方、ブロックチェーンビジネスではステークホルダーが多様であり、利用ユーザー企業、データ提供企業、中核となる運用企業、開発企業、出資企業など、様々な立ち位置が考えられるため、「どこからお金を頂くのか」については様々なパターンを考慮して検討する必要があります。
「協調領域の業界プラットフォーム」の進め方では、社会課題の解決そのものを収益機会と捉えるのか、コストと捉えるのかでも話が変わってくるでしょう。例えば、付加価値があれば手数料による収益機会にできますし、各社にコストがかかる場合も補助金などの活用によって、コストが軽減できる可能性もあるでしょう。
進め方②競争領域の企業派閥プラットフォーム
二つ目の進め方は、これまでの話とは少し矛盾しますが、実践的な進め方です。
先ほどは、”協調領域の課題を業界全体で”BC活用を推し進めようとしていましたが、二つ目の進め方は、”競争領域の課題を企業派閥で”推し進めるような方法です。通常の親子会社の資本関係よりも範囲が広く、リーダー企業グループの重要顧客やパートナー企業も含めて、ここでは「企業派閥」と呼ぶことにします。
競合同士が協調できることが最も理想的ではありますが、ブロックチェーンビジネスでは、競争領域でも他業種の企業同士で連携を図ることが可能です。
成功の鍵は「訴求点を明確にすること」
企業派閥プラットフォームでも、利益相反は生じますが他業種の企業なので、競合同士ほどではありません。そして企業派閥同士の中で差別化を図るためには、企業派閥の中で訴求点を明確にすることが重要です。例えば、
- SDGs/ESGやクリーンな業務体制をエンドユーザーに証明する
- 企業派閥間の業務効率化による価格競争力/提供スピードの向上させる
などが考えられます。
注意すべき点は、「リーダー企業の権威が強まりすぎないようにすること」です。他業種の参加企業にとっての秘匿データと開示データの区別はしっかりして、分散的にデータ連携していくことは企業派閥プラットフォームであっても変わらない部分です。
ビジネスの発展先は「インターオペラビリティ(相互連携)」
企業派閥プラットフォームのビジネス発展として、企業派閥プラットフォーム同士の相互連携が考えられます。競争領域のため相容れない事情があった場合でも、プラットフォーム間をブロックチェーンで価値付けされたデータが行き来できることで、業界全体の連携を目指すことができます。
他にも、ホワイトラベル化して、企業派閥のプラットフォームのノウハウを他の企業派閥のプラットフォームで使ってもらうということも考えられます。
業界唯一のプラットフォームのみではなく、「複数のプラットフォームが立ち上がりそれらの間を連携できること」は、それもまたある意味「分散的」でありブロックチェーンビジネスとして実現可能できる将来像です。
収益の源泉は?
収益の面では、「競争領域の企業派閥プラットフォーム」対「エンドユーザー」という構図になることが多いです。付加価値として代金を反映させたり、もしくは売上向上のためのマーケティングコストと捉える場合もあるかもしれません。
まとめ
シリーズ記事の内容は以上になりますが、いかがだったでしょうか。5章のメッセージをまとめます。
Cordaを使うと、企業の利益を守りつつ競争領域と協調領域が共存できる。
競合企業同士で協調領域のプラットフォームとして推し進めることがまさにブロックチェーンビジネスの本丸です。競争領域・協調両機の共存する典型例として、競合企業同士で協調領域のプラットフォームとして推し進めることが、ブロックチェーンビジネスの本丸になります。
業界唯一のプラットフォームのみではなく、「複数のプラットフォームが立ち上がりそれらの間を連携できること」は、それもまたある意味「分散的」でありブロックチェーンビジネスとして実現可能です。
BC活用に向けた具体的なアクションプラン
- 社会課題を解決するための競合同士で協調ができそうか考えてみる。
- 収益につながる他業種企業同士の協調ができそうか考えてみる。
ブロックチェーンビジネスの本質とは・・?
最後に、これまでの内容を踏まえつつ、ブロックチェーンビジネスの本質のまとめて、このシリーズ記事を締め括ります。
データ活用の時代、企業は安易にデータを第三者に渡したくない。
しかし、それだと企業同士で協調できないまま、社会課題の解決は難しいだろう。
だったら、生殺与奪の権を他人に握らせない「分散化」が解決策になるはず。
利益相反する企業同士による対等な関係の分散的な運用体制で、真正なデータ連携を。
競争の中でも必要な協調を、秘匿データの中でも必要な開示をできるようにしよう。
そして、社会課題の解決だけではない。
企業間フロー効率化やデジタルアセットなどの付加価値で、新たな収益機会も目指そう。
これが、企業向けブロックチェーン「Corda」が目指すブロックチェーンビジネスの姿。
弊社では、Cordaに関するライセンスや技術サポートだけではなく、ブロックチェーンビジネス構築のご支援もさせていただいておりますので、気になる点や相談したいことがあればご気軽にお問い合わせいただけると幸いです。
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