デジタルトランスフォーメーション(DX)の概念とその進行段階について説明し、日本企業がどの段階にあるかを分析する。
はじめに
本ブログは、2021年4月21日に開催したオンラインイベント「大林組様登壇!建設・製造業界における最新のDX事例をご紹介」でのプレゼン内容を再構成してお届けしております。読者想定は製造業や建設業のお客様です。
デジタル化の概念整理
今回は、日銀が2021年3月29日に発表されたレポート「わが国の銀行におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)」から触れていきます。
このレポートでは、DXの定義を「デジタル技術を活用して経営 や業務のあり方を大きく見直し、経営の効率化とより付加価値の高いサービスの提供を目指す動き」としています。このDXへのアプローチを、3つのSTEPで紹介しています。
このようにDXは、一足飛びに達成するのではなく、デジタル化の段階を経たその先にある取組みと言えます。順を追って見ていきます。
最初のSTEP1はデジタイゼーション(Digitization)です。これは”情報のデジタル化”、例えば紙の情報をデータ化して扱えるようにする段階といえます。
次のSTEP2はデジタライゼーション(Digitalization)です(タとイの間に「ラ」が追加されています)。これは”業務のデジタル化”、典型的には手作業による処理をデジタルに移行する段階といえます。
最後にSTEP3がDX。ここに至るまでに、情報はデータ化、業務はデジタル化されています。このデータ化・デジタル化された基盤を足掛かりに、”新しいサービスの提供”や”ビジネスモデルの変革”を実現していくフェーズになります。
日本企業はこのステップを進めているのか?
もう一つ、CNET Japanの記事「なぜDXをやるのか — 米国企業は新規事業、日本企業は既存業務の改善」を紹介します。この記事では、日本企業と米国企業が何にIT予算を投じているかを分析しています。
上記図ですが、蜘蛛の巣を取り囲むようにIT予算の使い道が記載されています。赤と青の実線が、実際のIT予算の割り振り先です。赤は日本企業、青は米国企業を示しています。
この図によると、日本企業は「ITによる業務効率化/コスト削減」や「未IT化業務プロセスのIT化のため」等に多く予算を割いています。上述した”デジタル化の概念整理”に照らし合わせると、まだSTEP1/STEP2の段階にいると言えます。一方、米国企業は「市場や顧客の変化への迅速な」や「ITを活用したビジネスモデルの変革」等、顧客の方を向いて、どう提供価値を出すかという目線で投資しているのが分かります。おそらく米国企業はSTEP1/STEP2を完了し、既にDXの段階に来ているものと思われます。
我々は何をどうデジタル化すればよいか?
さて、このような状況において、日本企業である我々は一体何をすれば良いでしょう。短期と中長期に分けて考えていきます。短期がSTEP1, STEP2、中長期がSTEP3の位置付けです。
短期的 なデジタル化
まずはすぐ出来て効果も出せる部分から取り組みましょう。例えば、契約書等の紙の廃止、マニュアル受発注業務の電子化等が典型的な取り組みかと思います。取り組む上での障壁も特にありません。この領域では、既に出来上がった製品やサービスが出ています。これらを活用し、すぐに効果を出しましょう。例えば、「Amazonビジネス」を使って、調達・購買プロセスを改善しつつ、コスト削減します。他には、豊田通商システムズが開発する電子契約サービス「TBLOCK SIGN」を利用し、契約書や見積書、受発注書、納品書、検収書などの書類データを、取引相手と簡単に授受する仕組み(もちろん電子署名とタイムスタンプ付き)を導入することも考えられます。
中長期的 なデジタル化
一方、中長期的なデジタル化は一旦頭を整理してから取り組む必要があります。いきなり「将来何する?」と考えてはいけません。なぜなら、中長期は、STEP1/ STEP2のデジタル化が済んだ後の、”デジタル前提の世界”を強く思い描く必要があるからです。
つまり、紙はデータ化され無くなっているし、業務の多くはアプリで完結し定型化されています。
例えば、2023年のインボイス制度導入に伴い、企業間でやり取りされる請求書の完全電子化を目指す動きがあります。このインボイス制度に伴うDXを考えるならば、2023年以降、企業行動がどう変わっているか、状況を想像して検討しなければなりません。おそらく各社の経理担当者は画面からポチポチと請求書を作成しては送っているでしょう。この請求書データはどこで生まれたでしょう?このポチポチの前後にはどんなイベントがあるでしょう?経理担当者の頭の中では何が邪魔してるでしょう?それに対し、サービス提供者の観点で提供できる価値はあるでしょうか?こう考えて歩み始めるのが中長期的なDXです。
考えすぎる人が続出
この視点で考え詰めると、「会社の存在意義」まで立ち戻って検討される会社も出てきます。DXを本気で考えるとそうなります。もしくは、会社が要らなくなる、とまでは言わないが、少なくとも今やっている手法は変更を余儀なくされることも分かってきます。最終的には、コアビジネスへ回帰し、デジタルの力でコアビジネスの価値をさらに高める、という結論に辿り着くことが多いです。ただ問題は、自社のコアビジネスだけでは提供価値に限界がある点です。STEP1/ STEP2でデジタル化による価値向上は可能です。ブレイクスルーは、STEP3で起きます。すなわち、自社にない他社のコアビジネスを組み合わせると、それが、新サービスとなり、ビジネスモデルの変革へと繋がることに気が付きます。
協働の実現方法
他社との協働によりコアビジネスを組み合わせるとは、単に仲良くなるのではありません。新たな提供価値を生み出すための基盤を文字通り共有することになります。今一度、中長期の未来にいる”デジタル前提の世界”を想像して下さい。自社が持つ価値(データとプロセス)と他社の価値(これもデータとプロセス)は完全にデジタル化されています。ポチポチとするだけで他社から必要なデータを取ってきて、今まで見せられなかった情報に昇華させて顧客に提供できます。新サービスです。この実現手段が、実はブロックチェーンだったりします。
Part Twoに続く
<ご質問・ご要望の例>
- Corda Portalの記事について質問したい
- ブロックチェーンを活用した新規事業を相談したい
- 企業でのブロックチェーン活用方法を教えて欲しい 等々