私が最近行った講演内容をもとに、R3Japanで私が個人的に実現したいと思う「デジタルトラスト」についてご紹介します。
2024年「ブロックチェーンビジネス・アドベントカレンダー企画」19日目の記事です。 関連企業の皆様にも記事を書いていただく予定ですので、是非お立ち寄りください!
はじめに
皆様アドベントカレンダーは楽しんでいただけているでしょうか。前回の記事に引き続き、本日は、分散台帳を活用することで解決可能な社会課題として「デジタルトラスト」をご紹介をしたいと思います。
トラストという言葉は先日の流動性という言葉と同様に非常に難しい概念です。また、この分野はまだまだ始まったばかりで、用語の定義も、使い方も様々です。統一した見解や用語の定義は専門家集団で決めてもらうとして、今回もまた「デジタルトラスト」から生まれる夢の形についてお話ししたいと思います。
こちらは現実的なユースケースが出てきているわけではないので、夢の形についてご紹介するにとどまる予定です。とはいえ、経団連による軽井沢宣言の中で
- データ連携を支えるデータスペース構築の大前提として、認証基盤を早急に整備すべき。
- 相互運用可能なデータスペースの構築や、国際的なルール形成を進める
といった形で言明されるなど、急速にこの分野の重要性は高まっていると理解しています。
この領域を簡単に理解するために必要な概念として「デジタルツイン」と呼ばれるものがあります。様々な情報がデジタルの世界で作られるようになった現代では、「純粋にデジタルなデータ」ではなくて、「リアルに存在する何かに紐づくデータ」、というものがたくさん生まれてきています。例えば
- ブルドーザー(リアル)が排出した二酸化炭素の量(データ)
- あなた(リアル)の卒業証書や免許証(データ)
- ドローン(リアル)がドローン用の航路を確保するための支払いに使用するデジタルトークン(データ)
といった世界観です。
こうした領域では、一瞬NFTというバズワードが解決策になるという期待もありましたが、実際にはそれでは特に機能面で不足しており、より現実的かつ実効性の高い技術アイディアが求められつつあるのが現状かと思っています。前回同様、小難しい話は置いといて、早速将来像についてご紹介していきましょう。
デジタルトラストがもたらす将来像(夢)
将来像①:信用可能なデータとデータ主権の両立
- グリーンウォッシュを排除しつつ、特定の建設現場で排出される二酸化炭素の量をワンクリックで確認できる。
- メーカーを問わず、車の部品に関するリコール情報がリアルタイムに車へ配信される。
将来像②:法的権利のデジタル化
- レンタカーを金融資産として保有できる。
- 混雑度合いに応じて利用金額が変化する高速道路を実現する。
- ドローンや自動運転車が、ぶつかることなく専用道路を移動できる。
将来像③:資格と属性のデジタル化
- 外国のレンタカー会社で、すぐに車を運転できる。
- 不正が露見した場合に、直接の取引相手でなくても訴訟を起こすことができる。
- 特定の管理ルールに従って在庫や物流がなされた商品であることを確認することができる。
こうした将来像に必要な技術要素は多岐に渡りますが、だからこそ、新規ビジネスの種としては非常に有望な領域であると思っています。自社ビジネスとのコラボレーションに当たってIT技術という観点でどう進めていけばいいかというご相談があれば、ぜひ一度お話しさせてください。
デジタルトラストが必要なのはtoC?それともtoB?
この領域はパブリックチェーンユースケースのようにtoC領域で進展するよりも、toB領域でのニーズが高まる方が先になるのではないかと感じています。なぜなら、データの利活用は企業で進む一方、ほとんどの個人は自分自身の個人データに対して非常に無頓着であるからです。皆さん、Webサービスの利用開始時に表示される利用規約を真面目に読む人いないですよね。そこには多くの場合個人データの利活用に関する文言が入っていますが、無邪気にOKを押して自分の情報を無料で売り渡しているのではないでしょうか。
一方で、企業経営においては生成AIの隆盛もあり、自社データの利活用は死活問題になりつつあります。その流れは「自社のデータの囲い込み」という観点ですでに一部顕在化しています。しかし、ただただ自社データを囲い込む事が企業の勝利につながるわけではありません。(そのような企業はtoC領域に対して強い接点を持つ企業に限られると思います。) toB領域では、必要に応じて必要な相手とデータを交換する、できることはビジネスを存続させるという観点で非常に重要になると思います。 この観点で「デジタルトラスト」の領域は今後も発展するでしょう。弊社の親会社であるSBIホールディングスでも、この領域へのチャレンジを始めています。
まとめ
デジタルトラストが実現した未来についてご紹介いたしました。
デジタルトラストの実現に向けては、「データをどこにどう置くのか」に関する技術的な最適解を見つけ出す必要があります。 私の知る限りその答えはまだ見つかっていないと思っています。置き場所の候補だけをとっても
- スマホ
- 専用ハードウェア
- PC
- 自社管理サーバ(プライベートチェーンもここに含まれます)
- 他社管理サーバ
- パブリックチェーン
など様々です。
この辺りの議論もまた、近いうちに記事化させていただければと思います。
明日は、みなさまお待ちかね、AI✖️ブロックチェーンのお話です!お楽しみに!
<ご質問・ご要望の例>
- Corda Portalの記事について質問したい
- ブロックチェーンを活用した新規事業を相談したい
- 企業でのブロックチェーン活用方法を教えて欲しい 等々
SBI R3 Japan エンジニアリング部長
書籍出してます:https://amzn.asia/d/c0V31Vd
趣味:サッカー、ガンプラ、ドライブ、キャンプ