ブロックチェーンはデータを「価値」に変える。その「価値」はビジネスにどのように影響を与えるのか。
データが”価値”になると何が嬉しいのか?
前回のブログでは、”情報”と”価値”の違いについて説明しました。両者とも電子化されたデータである点は共通していますが、1)対改ざん性と2)データの二重利用防止の観点で、データ(価値)の方は電子化のデメリットを克服していることが分かりました。では、もう一歩踏み込んで、データが情報から”価値“に変わることで、ビジネスユーザーにとって何が嬉しいのか(たぶん何か嬉しいことがあるはず)。そして、なぜ世界中の企業がこのブロックチェーンを応用して様々な仮説をもとに、実証実験(POC, Proof of Concept)に取り組んでいるのか、これを紐解いていきたいと思います。
価値を認めるためにVerifyする、Trustしない。
本題に入る前に、共通認識として理解しておきたいのは、自分の手元にあるデータに対し「これは価値があります!」と主張しているのは、自分だけじゃない点です。取引相手である他人から見ても、そのデータに”価値”があると言えるのです。なぜなら、他人はそのデータの所有者を見て(信用して)、その”価値”を認めているのではなく、自らデータを検証し、「確かに改ざんされていない」、「確かに二重に使われていない」と納得するから、そのデータの”価値”を認めることが出来るのです。(これが”Don’t trust, verify”という有名な言葉の意味)。
データ(価値)の特徴①=対改ざん性がある
もう一度、データを価値たらしめる特徴を振り返り、深堀していきましょう。電子化されたデータは、ハッシュ化や電子署名の技術を適用することによって、対改ざん性を備えることが出来ます。これが意味するところは取引当事者である複数のプレイヤーが、取引合意時点における内容を、それぞれ手元のデータベースで保存したとしても、勝手に変更されずに、同一の状態を維持出来るということです。特定の第三者がそれぞれのデータベースを管理する必要もありません。ブロックチェーンの仕組みがその代わりを果たします。データべースの管理者に関わらず、データそのものに原本性が与えられる、すなわち、ブロックチェーン上で電子化されたデータは、もはや変更可能なデータではなく、原本性を持った現物の資産のように扱える、と言えます。自分だけじゃなく、他人もその資産性を認めてくれるのです。
データ(価値)の特徴②=データを二重に使用出来ない
そして2点目。データが二重に使用出来ないとはどういう意味か。例えば売掛債権の早期現金化(Receivable Financing)を例に考えてみましょう。サプライヤーが売掛債権(原本)を紙で銀行に持ち込んで現金化するのであれば、特に問題は発生しません。かなりの手間がかかるというだけです(紙の準備、外出予定、移動時間, etc.)。では業務効率化のために電子化して売掛債権をデータ(情報)に変換したとします。このデータ(情報)を銀行に送付したとして、銀行側はどのようにこの売掛債権が唯一無二のデータであると確信すれば良いでしょうか。これは困難です。なぜなら、元データ(情報)の売掛債権はコピーして何度でも使えるからです。悪意を持ったサプライヤーは、売掛債権のデータ(情報)を複数の金融機関に持ち込んで、不正に現金化するかもしれません。ここにこれまでの電子化の限界があったわけです。ブロックチェーンにより電子化すれば、そのデータに「二重に使用出来ない」という機能を与えることが出来ます。その結果、銀行はサプライヤーが持ち込んだ売掛債権のデータ(価値)を安心して受け取ることが出来ます。ブロックチェーンの世界では、データは会社を跨いで確実な移転が可能になるのです。
だから、信頼出来る第三者(管理者)が不要になる
電子化のメリットは、自由に書き換えができ、何度もコピーできることですが、反面これらは脆さでもあり、従って必ず管理者によるデータ管理が必要でした。システム管理者であったり、取引当事者ではない第三者機関だったりです。つまり、データの信頼性は誰がそれを持つかに委ねられているのです。ここでブロックチェーンが上記二つの特徴をデータに与えることの意味は、データそのものが信頼出来るのであれば、そのデータを誰が持っていても良い、ということです。利益相反の関係にある取引の当事者同士が直接データを持ち合っていても、本人たちですら勝手に改ざんが出来ない状態でデータを保持出来る。これが、ブロックチェーンは信頼出来る第三者が不要になると、言われる所以です。
これをやっているのがブロックチェーンの世界
最後に纏めます。何らかの実体ある現物は電子化によりデータに変わります。これだけではまだ単なる情報です。この情報は、①対改ざん性と②データの二重使用防止、の仕組みに支えられることにより、”価値”へと変わります。この価値は誰もが検証を通じて認めることが出来るため、現物の原本性のある資産と同じモノとして扱えます。資産であるならば、それを会社間で安全に移転することが出来ます。しかもその移転をハンドリングする第三者は要りません。さらにこれを”早く”出来ます。
このコンセプトを現実の様々なビジネスシーンに適用することで、業務のやり方が変わってしまいます。一番典型的なのが送金。キャッシュのデータは第三者なしで、Eメールのように相対で送り合うことが出来ます。貿易書類であるL/Cは本来紙でやり取りしなければなりませんが、ブロックチェーンで電子化することにより、データにも関わらず原本性が与えられます。だからそのデータを相手に送っても、紙を郵送するのと同じ効果が得られ、ただ早くなるのです。サプライチェーンの川上から川下に流れるデータは、会社を跨いでいるにも関わらず、なお誰もがその真正性を疑わなくて済むようになります。保険料計算の元となるリスク情報は、誰もが原資産として扱えるデータであり続け、インターネットを通じてリアルタイムに共有されることにより、ダイナミック・プライシングが容易に行えるようになるでしょう。電子カルテのように、機密性が求められ、かつ絶対に間違えられない情報は、病院やクリニックで個別に厳重管理されています。もし電子カルテのデータが病院・薬局を跨いでも確実に移転出来るのであれば、公共の利益のために、安全に医療機関間で共有されるでしょう。土地登記所はブロックチェーンのメリットを享受することで、仲介者としての受付・申請・審査業務を削減でき、それでもなお、これまで通りマスターの土地登記簿を維持・管理出来るでしょう。だからブロックチェーンは嬉しいのです。
そしてこれら全てを実現出来るのは、R3 Cordaです。日本ではSBI R3 JapanがCordaの普及を担っています。
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