定期的に開催しているCorda技術イベントの様子。今回はCordaの最新リリースやReference Stateの活用法を発表した
はじめに
2022年5月12日に開催されたCorda/Conclave Tech Meetup 春の陣。
企業間取引での利用に特化したブロックチェーンプラットフォーム「Corda」や秘密計算プラットフォーム「Conclave」の情報発信やブロックチェーン技術者交流を定期的に行っている本イベントですが、今回はSBI R3 Japan社員・インターンより技術課題の調査結果や最新アップデート情報をお届けいたしました。
本記事では各発表について概要をご紹介しています。
①Corda最新リリースのご紹介&Corda資格取得のすすめ(生永)
生永より、Corda4.9及びCorda5の最新情報、Cordaに関係する資格の取得について発表いたしました。
Corda4.9
Corda4.9の主な変更点はセキュリティ課題やバグフィックスとなっています。
また、技術サポートの内容とEdition間の違いについて下の表のとおりに整理して解説いたしました。
Corda5
Corda5についてはアーキテクチャの根本的な仕様変更が進行中です。主な変更・追加項目は
・インストーラ
・Kafka
・レイヤ再定義
・仮想ノード
の4つです。特にレイヤ再定義については詳しく例を挙げてメリットを紹介しました。
Cordappには企業間での取引に必要な様々な機能が含まれていますが、いつでも全ての機能が必要とされるわけではありません。
Corda4までは、契約前の条件交渉にもCordappを利用したいというような場合であっても、スマートコントラクトやバックチェーン検証、ノータリーの署名等の不要な機能が含まれていました。
しかし、Corda5ではAPIを階層化することにより機能のオン・オフを簡単に切り替えられるようになります。必要な機能だけを選んで使うことができるようになり、より使いやすく・用途が幅広くなります。
資格取得
資格取得のセクションでは、Corda/Conclaveに関わる以下の3つの資格についてご紹介いたしました。
・Corda開発者として知識を持つことを証明する Corda Certified Developer
・Conclave開発者として知識を持つことを証明するConclave Certified Developer
・Cordaを利用したビジネス構築のための基本的な知識を持つことを証明する Corda Certified Business Professional
今回はMeetup参加者限定でこれらの資格試験の受験料が無料になるクーポンコードを公開しました。
②Reference Stateの活用方法(トレーサビリティ領域)
概要
SBI R3 Japanインターンの井本より、Reference Stateの挙動の検証について発表いたしました。
Reference Stateは「原材料のトレース情報」のような参照情報を表すことに適したStateの一つで、トレーサビリティ領域での活用が期待できます。今回の調査では、このReference Stateを実装する上でのフィジビリティを確認しました。これは、SBIトレーサビリティが提供するトレーサビリティ・サービスSHIMENAWAの機能向上にも繋がる重要なものです。
今回の発表では以下の3つの内容について調査し、その方法やコードについて技術的な解説をいたしました。
調査内容
①Reference Stateをトランザクションに含むことはできるか?通常のコントラクトのなかで検証できるか?
②あるノードが発行したReference Stateのバックチェーンを別のノードから確認できるか?
③一つ前のバージョンのReference Stateをトランザクションに含むことができるか?
これらのうち、①②はできる、③についてはできない/エラーになるという結果が出ました。
③については、情報を更新する際に「古い情報をインプットとして消費し、新しい情報をアウトプットした」と判定されるため、前のバージョンのReference Stateは既に消費されているとしてトランザクションに含むことができず、エラーとなることが確認できました。
詳細な内容については井本の記事をご覧ください。
CordaにおけるReference Stateの活用方法(コード解説編)
CordaにおけるReference Stateの活用方法(デモンストレーション編)
③Conclave DEMO
堀田より、秘密計算ソリューションConclaveの最新情報のご紹介とアーキテクチャ及びデモの発表を行いました。
秘密計算・Conclaveとは
秘密計算とはデータを秘匿したまま計算することができる技術の総称で、プライバシーを保ったままでデータの利活用が可能になる技術として注目されています。この技術は例えば、具体的な生年月日を相手に知らせることなく「成人している」証明をすることを可能にします。機械学習や与信調査、治験データの結果のみ共有する等、活用領域は多岐に渡ります。
実現方法・技術は様々ですが、その中でもIntelSGXを用いて実現したものがConclaveです。
最新情報
最新情報として、間もなく登場するConclave Cloudについてご紹介いたしました。Conclave Cloudは、ユーザーが秘密計算の演算結果だけを受け取ることができるクラウド上のサービスです。随時リリース予定の機能として、秘密機械学習、プライバシー保護Database、暗号化データの検索等があります。
また、Conclave Cloudについては皆様からの「こんな機能が欲しい」等のご要望もぜひお寄せいただき開発に反映させたいと考えております。
④最後に
ここまでお読みいただきありがとうございました。次回のTech Meetupの開催予定についてはSBI R3 Japanサイト上でお知らせする予定です。
旭化成様、丸紅様にご登壇いただき、ブロックチェーンを活用した模造品排除、サーキュラーエコノミーの事例をご紹介したイベントのレポートも近日中に投稿予定です。ぜひお読みください。
<ご質問・ご要望の例>
- Corda Portalの記事について質問したい
- ブロックチェーンを活用した新規事業を相談したい
- 企業でのブロックチェーン活用方法を教えて欲しい 等々