UAEがR3と提携し2025年第4四半期にCBDC「デジタル・ディルハム」を発行。国内外決済や金融革新を促進へ。
本記事は、Ledger Insights: UAE to launch CBDC in Q4 2025 の要約記事になります。
はじめに
アラブ首長国連邦(UAE)の中央銀行(CBUAE)は、2025年第4四半期に中央銀行デジタル通貨(CBDC)「デジタル・ディルハム」を発行する計画を発表しました。このCBDCは法定通貨として扱われ、支払い手段としての受け入れが義務付けられます。また、国内外の決済やホールセール取引にも利用される予定です。
デジタル・ディルハムの特徴と導入計画
CBUAEは、デジタル・ディルハムの導入と同時に専用のウォレットを提供する予定です。このCBDCはブロックチェーン技術を基盤とし、銀行、取引所、金融会社、フィンテック企業を通じて流通されます。スマートコントラクトによるプログマビリティやトークン化による分割所有が可能となり、複雑な取引の自動化や即時決済(アトミック・セトルメント)を実現します。
CBUAEの総裁であるKhaled Mohamed Balama氏は、「デジタル・ディルハムは、金融の安定性、包摂性、レジリエンスを強化し、金融犯罪への対策を強化することが期待されます。また、革新的なデジタル製品やサービス、新たなビジネスモデルの開発を促進し、コスト削減と国際市場へのアクセス向上を実現します」と述べています。
R3との提携とCBDC戦略の第1フェーズ
CBUAEは、CBDC戦略の第1フェーズとして、ブロックチェーン企業R3およびクラウドインフラ企業G42 Cloudと提携しました。R3はCBDCの技術提供を担当し、G42 Cloudはインフラ提供を担います。この戦略は、CBUAEの「金融インフラ変革(FIT)プログラム」の9つのイニシアチブの一つであり、国内外のさまざまなユースケースにCBDCを適用するロードマップを示しています。
第1フェーズでは、以下の3つの主要な柱が含まれています:
- 国際貿易決済のための実際の価値を持つクロスボーダーCBDC取引の開始
- インドとの二国間CBDCブリッジの概念実証作業
- ホールセールおよび小売での国内CBDC発行の概念実証作業
国際的な連携と過去の取り組み
CBUAEは、過去に以下のような国際的なCBDCプロジェクトに参加してきました:
- Project Aber:2020年にサウジアラビア中央銀行と共同で実施されたホールセールCBDCの試験。
- mBridge:UAE、中国、香港、タイの中央銀行、および国際決済銀行(BIS)が共同で開発したクロスボーダーCBDCプラットフォーム。2024年には初の取引が実行されましたが、BISはその後プロジェクトから撤退しました。
- インドとの協力:UAEはインドとクロスボーダーCBDCの試験を実施しました。
これらの取り組みは、UAEが国際的な金融ハブとしての地位を強化し、デジタル通貨の分野でのリーダーシップを確立するための戦略の一環です。
ブロックチェーンと暗号資産への積極的な姿勢
UAEは、ブロックチェーン技術と暗号資産に対して積極的な姿勢を示しています。ドバイ国際金融センター(DIFC)やアブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)などの国際金融センターは、暗号資産に関する規制の整備を進めています。また、国営企業であるMGXは、暗号資産取引所バイナンスへの投資を行っています。
デジタル・ディルハムの導入は、UAEの金融インフラの近代化と国際競争力の強化に向けた重要なステップとなるでしょう。
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SBI R3 Japan エンジニアリング部長
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