この記事で学べること
ブロックチェーンを用いたポストトレード業務&事例
ブロックチェーンを使ったポストトレード業務とは
ポストトレード業務とは、株などの証券売買の約定後から、実際の受け渡しである証券と資金の決済までの間に行われる各種業務のことである。主に証券保管振替機構(JASDEC)、日本証券クリアリング機構(JSCC)、各証券会社のバックオフィス担当者が行う。
約定照合は、証券の振替とは異なり法規制がない領域のため、計算方式、通知方式、各種コードなどの規格が統一されておらず、また複数のサービスプロバイダが顧客ニーズに応じたシステムをそれぞれ提供している。また、システム同士の互換性がないため個別対応が必要であったり、各サービスプロパイダで別々のデータベースを持っているためシステム集約が不可であるなどの課題が残っている。特定の中央機関がシステムを一元的に提供すればこれらの課題は解決できると考えられるが、中央機関の集中管理には多くの制約が生じてしまう。
上記のポストトレード業務の課題に対して、分散型台帳技術(以下、DLT)を用いることで中央機関による集中管理を前提としないシステム作りが可能となる。
日本ではJPXによる「証券ポストトレード領域における DLT情報共有基盤の実機検証プロジェクト」が検討されており、海外では既に着手され始めている。ここではCordaを活用した海外でのポストトレード業務を紹介していく。
#1 DTCC Project ION(証券決済期間短縮)
- DTCCは世界最大級の証券決済・保管機関として45年以上の歴史を持ち、米国をはじめ世界21 ヶ国の拠点を通じて、数多くの金融機関や運用会社に対し金融取引処理業務を効率化するサービスを提供している。
- Project Ionは複数年にわたるDTCCの決済分野における分散型台帳技術(DLT)活用の研究を踏まえて2020年に開始されたプロジェクトで、上場株式の決済に掛かる期間を現在標準となっているT+2決済から、T+1、T+0へと短縮することを目指すものだ。決済期間の短縮に伴い、取引を行う金融機関は未決済リスクが低減され、必要となる預託金も大幅に削減できるものと見込まれている。
- 今回並行運用が開始された、Corda DLTを基盤技術とする新たな株式決済基盤Project Ionプラットフォームは、既存の決済基盤の代替サービスとして提供され、すでに1日平均で10万件、ピーク時には16万件の決済が処理されている。上場株の決済を対象とした金融業界で最大級の革新的なDLT活用案件であり、今後は中央精算機関(Central Counter Party)との連携も含めた機能拡張を予定している。
#2 D7(ポストトレード効率化)
- 「D7」を活用することでデジタル証券の発行、カストディ(保管)、決済、支払い、アセットサービシング(債権回収)などのバリューチェーン全体において、即日発行やペーパーレス、自動化されたSTPを可能にする
- ドイツでは今年6月より電子証券法(eWpG)が発効され、従来の株券を必要としない電子証券の発行が可能となった。「D7」についても電子証券法に基づいた規制に準拠したプラットフォームであることが説明されている。
- ドイツ証券取引所は「D7」導入により、2022年半ばには国内で扱う証券の80%以上がデジタル化可能であると説明している。
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