この記事で学べること
Cordaの特性とその適用範囲について語ったカンファレンスのQ&Aセッションの内容を学ぶことができます。
はじめに
2018年12月に行われたカンファレンス( SAP Outside The Block)において、R3社のRoger WillisによるQAセッションの内容をまとめたものです。
Q1.この技術はどこに向かうのか
質問:ブロックチェーン技術が誕生して10年。ガートナーによれば、この技術のブームは去ったとされています。この技術はどこからきてどこへ向かうのでしょうか?
ブロックチェーンはBitcoinから始まり、この10年で大きく進化しました。そして、金融のような規制された業界の要件を満たすべく、Cordaは生まれました。私は今、分散型ネットワークを実現したいという技術者の夢が、まさにビジネスとして結実する様を見ています。例えばR3社では、Cordaアプリの可用性や、ネットワーク要件を満たすための改良を日々行っています。
現在、ブロックチェーン技術を開発している企業の多くは市場マーケティングを始めています。今のところ最も適したユースケースは(デジタルアセット、証券、現金などの)トークンです。プラットフォームとしてのCordaの技術的優位性は、今後多くの企業がCorda上でトークンを発行することによって証明されるでしょう。
Q2.最も効果的なユースケースは?
質問:企業が用いるBlockchain/分散台帳のもっとも効果的なユースケースは何ですか?
Corda上で完結するトークン発行です。ICOではなく、証券のトークン化というユースケースです。規格化、SDKの提供、Wallet、アカウント管理等、すべての機能を用意します。それによって、企業は非常に簡単にトークンを発行できるようになるでしょう。今後数か月で皆さんは様々なニュースを提供できると思います。
Q3.共有範囲のニーズはあるの?
質問:Blockchainマニアと話す際、よく話題に上がるのはデータ共有のコンセプトです。あなたはどのように考えますか?また、共有範囲の管理というニーズに対してどのような回答をお持ちですか?
プライバシーの必要性は明らかです。ただ、ゴシップネットワーク技術をベースにした一部のブロックチェーン企業は、その技術的困難さからこの問題を無視してしまったようです。ユーザーの要望を理解していないとしか言いようがありません。
代わりにCordaはP2Pネットワークから始めました。見る必要のない人にはデータを送らない。トランザクション検証に必要な最小限のデータのみを共有する。もしブロードキャストやゴシップネットワークが必要な場合は、P2Pネットワークの機能を拡張すれば事足ります。また、台帳上のIDは疑似匿名性をもつIDを使う事になりますが、このIDを現実世界のIDとリンクすることも可能です。
さらに、R3社では、完全に暗号化された台帳を実現するためにIntel SGXの仕様を検討しています。すでにプロトタイプは存在しています。同様に、ZKP(ゼロ知識証明)の適用領域の検討も始めています。制約コンピューティング(constraint compilers)のような、ZKPのより一般的な適用については時期尚早だと考えています。また、量子コンピュータの影響も当然考えなければなりません。こうした技術が花開くのも時間の問題だと思います。楽しみにですね!
Q4.Cordaと他の基盤の大きな違いは?
質問:Cordaは、他のエンタープライズBlockchain技術とは異なるアプローチをとっていると思います。Cordaを設計するにあたってどのように考えたのか、また、またもっともの大きな違いは何なのか教えてください。
他のブロックチェーンにできてCordaにできない事はありません。逆は違うかもしれませんが。例えば、パーミッションレスネットワーク(Permissionless network)は他のあらゆる代替手段より優れているという事を呟くことに何時間も書けている人がいます。もちろん議論の余地がある話です。しかし実際のところ、CordaはBitcoinと同程度にパブリック(public)だし、パーミッションレス(Permissionless)なのです。
Cordaの特性は、その実装方法に依存します。実装次第であらゆる特徴を内包することができるのです。
実際、私たちは当初、Cordaをパーミッションネットワーク(Permission netowork)を前提に実装しました。顧客がそう望んでいたからです。ファイナリティ、パフォーマンス、現実のIDとのつながり、プライバシーの確保。顧客はこうしたものを求めているのです。
もちろん、Cordaは非常に柔軟で、BitcoinもEthereumもCordappとして構築できます。(誰もしたくないかもしれませんが)IBM Fabricも構築できるでしょう。
では、なぜ、そしてどういう意味で、Cordaは「分散台帳におけるLEGO」になれたのでしょうか。それは、Cordaのファウンダーたちがブロックチェーンにおける神話を無視し、すべてを一から考えたからです。ファウンダーたちの考えた根本的な解決すべき課題は、「アリスはボブの見ているものを見られない」ことであり、「ボブはアリスが見ているものを見られない」ことだと考えました。それぞれに排他的で孤立したサイロごとにデータの複製を行い、確認しあうことは、非常にコストがかかるのです。
解決策は、アリスとボブがお互い信頼することなく、同じ事実を見、同じ事実を知ることができるプラットフォームを構築する事でした。非常にシンプルな答えです。ここにいくつかの機能、取引内容の検証、コンセンサス、スケーラビリティといった要件を追加すれば、Bitcoinが垣間見せたブロックチェーンの可能性をより一般化させた技術を手にすることができるのです。Cordaはこうしたコア要件を実現させるプラットフォームであり、SDKであるのです。
まとめると、Cordaは開発者にトレードオフを提供します。その中で、開発者はどの要件が最重要なのか検討、決定することができます。
レゴブロックを選び、思い描くものをくみ上げてください。面白いですよ。
Q5.一番注力すべきことは?
質問:ここには様々な技術が展示されています。Blockchain,DLT,アプリケーション等。こうした技術への思いを一つだけ伝えるとしたら、あなたは何を改善し、何にフォーカスを当ててほしいといいますか?
エンドユーザーにフォーカスしてください。人々が求めるものを作り、人々の生活をよくすることへ注力してください。
<ご質問・ご要望の例>
- Corda Portalの記事について質問したい
- ブロックチェーンを活用した新規事業を相談したい
- 企業でのブロックチェーン活用方法を教えて欲しい 等々
SBI R3 Japan エンジニアリング部長
書籍出してます:https://amzn.asia/d/c0V31Vd
趣味:サッカー、ガンプラ、ドライブ、キャンプ