- リモートでスプリントレトロスペクティブを実施する方法の一例
- 流れは、Esther Derby と Diana Larsenの著書「アジャイルレトロスペクティブズ:強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き」に基づいたフォーマットです。
2024年「ブロックチェーンビジネス・アドベントカレンダー企画」11日目の記事です。 関連企業の皆様にも記事を書いていただく予定ですので、是非お立ち寄りください!
はじめに
SBIホールディングス ブロックチェーン推進室では、具体的な要件がまだ明確でないプロジェクトに取り組むことが多くあります。こうした場合、スクラムを活用することで、チームは新たな知見を発見しやすくなり、反復を重ねることでより迅速にクライアントからのフィードバックを得ることができます。
2020年版のスクラムガイドによると、スプリントレトロスペクティブの目的は、「品質と効果を高める方法を計画すること」です。
スプリントレビューが成果物を検査する機会であるなら、スプリントレトロスペクティブは、スクラムチームが最後のスプリントを振り返り、やり取り、プロセス、ツール、そしてチームの「完成の定義」(Definition of Done)を検査する機会です。一見すると多くのことを網羅しているように感じるかもしれませんが、ここで重要なのはスクラムマスターの細やかな配慮と少しの直感力です。
私自身の経験では、Esther DerbyとDiana Larsen が提供している優れたフォーマットをもとに、スクラムマスター(またはレトロスペクティブの進行役を任された人)が適切にカスタマイズすることが最も役にたつと考えています。
ここでは、私がリモート環境での作業時に効果的だと感じた実践例をご紹介したいと思います。
必要となるツール
お好きなオンラインホワイトボードサービス(以下、ツール例)
基本のフォーマット
基本の流れは以下の通りとなります。
- 場を設定する
- データを収集する
- アイデアを出す
- 何をすべきか決定する
- レトロを終了する
1. 場を設定する
指針の共有
スクラムに不慣れなチームの場合、アジャイルレトロスペクティブのプライムディレクティブ(Agile Retrospective Prime Directive)という指針が、「前回のスプリントで起こったことを客観的に話し合う場であり、人を責めるためのものではない」という期待をチームに伝えるのに役立ちます。私は冒頭でこれを読み上げ、質問があれば答えるようにしています。
英語:
Regardless of what we discover, we understand and truly believe that everyone did the best job they could, given what they knew at the time, their skills and abilities, the resources available, and the situation at hand.
日本語訳:
それは、「私たちが何を見つけたとしても、その時点で分かっているスキルや能力、利用可能なリソース、手元の状況を用いて、誰もが自分のできる最高の仕事をすることを、私たちは理解し、心から信じています。」ということです。
(ご参考:Retrospective Prime Directive in many languages)
ウォームアップアクティビティの例
- 「2つの真実と1つの嘘」 (時間がかかります。)
- このゲームの簡単な説明と例のテンプレートをこちらからアクセスできます: 2つの真実と1つの嘘のテンプレート
- 在宅勤務中に使っているマグカップの写真を投稿し、誰のものかをチームメンバーが当てる
- 事前にチームから写真を送ってもらい、MiroやMuralのようなオンラインホワイトボードツールに投稿しました。
- アイスブレイク質問(シンプルで時間をあまり取らない方法)
- アイスブレイクにあまり時間をかけられない場合に使います。
- 質問は仕事に関連する場合もあれば、しない場合もあります。ここでは、直感力や前回のスプリントでの観察スキルが役立ちます。
- 全員が発言するチャンスを得られる短いゲーム
- トピックが書かれたカードを1組用意しておき、誰かにカードを引いてもらいます。チームはそのトピックについて答えたり話したりします。
2. データを収集する
参加者がウォームアップしたところで、前回のスプリントについてのデータ収集に進みます。
よく使われるデータ収集の定番フォーマットは「うまく行ったこと、うまく行かなかったこと、改善できること」ですが、言葉やテーマを変更することもあります。
バリエーションの例:
- 怒っている、悲しい、嬉しい (Mad/Sad/Glad)
- 気に入ったこと、学んだこと、あればよかったこと(Liked, Learned, Longed For)
- やめる、追加、保持、改善(Drop, Add, Keep, Improve)
- やり始める、やめる、やり続ける(Start, Stop, Continue)
- リーンコーヒーのフォーマット(ご参考:リーンコーヒーの説明)
私はこのフェーズをできる限り楽しいものにするよう心がけています。私の考えでは、チームが単にチェックリストやフォームを埋めているように感じてしまうことが最悪の事態です。環境を活気づけ、オープンな雰囲気を保つよう努めましょう。
3. アイデアを出す
次は、トピックを詳しく議論し、深掘りして知見を得ることです。
しかし、もし時間が足りない場合はどうでしょうか?時間が限られていても、チームが最も重要だと思うトピックについて議論することは確実に行いたいところです。
私は通常、チームに投票をお願いしています。各メンバーに一定の投票数(たとえば、1人5票)を与え、最も多くの票を得たトピックについて詳しく話すようにします。
実施する際、使用しているオンラインホワイトボードツールに投票機能がない場合は、事前にドット投票用のセクションを作成し、投票用の「点」として円形の図形を挿入しておきます。
Microsoft Teamsを使用しているので、全員が発言できる機会を作るためにチームを小さなグループに分け、時間制限付きの議論のためにブレイクアウトルームに利用します。ルームを出入りしながら進行状況を確認します。時間が終了したら、各小グループにその議論の要点と改善提案を共有させます。
4. 何をすべきか決定する
さて、ホワイトボードにはチームメンバーからのインサイトや提案がたくさん集まりました。次は最も役立つ改善策を特定することです。
どのアクションを実行するかを決めるのはチームです。もし前のフェーズ(アイデアを出す)が効果的に行われていれば、メンバーは次のスプリントで取り組むべき提案についてすでにある程度のアイデアを持っているはずです。
覚えておくべきの重要なことは、レトロスペクティブから選ばれるアクションアイテムは、次のスプリントバックログに追加の作業として加わることです(これはオプションですが、忘れないようにするための良い方法です)。私は、チームが次のスプリントにあまり多くのアクションアイテムをコミットすることを期待したり、望んだりはしません。重要なアイテムに絞り、残りは将来のために保留にするように頼んでいます。
5. レトロを終了する
チームは最後のスプリントを振り返り、最も効果的だと考えるアクションを選び、それを次のスプリントバックログに追加しました。
さて、スプリントを終了する時間です!スクラムマスターとして、レトロスペクティブが効果的だったか、または次のスプリントに向けてチームがどう感じているかを確認したくなるかもしれません。
私は通常、簡単な締めくくりのアクティビティを行います。例えば、レトロスペクティブを1から5の星で評価してもらうことです。
その他のバリエーションや質問:
- レトロスペクティブの前後で、気持ちはどう変わりましたか?
- 次のスプリントに向けてチームのステータスを聞きます。
- 絵文字や天気アイコンを使うこともあります。
最後に
スプリントレトロスペクティブは、スクラムにおいてチームが自身の作業の実施を振り返る貴重なイベントです。しかし、レトロスペクティブを実施する方法は一つではありません。上記の通り、私はこれまでに使用した実践例の例を紹介しましたが、創造力と柔軟な思考を心掛けていただけると良いかと思います!
楽しく生産的なスプリントレトロスペクティブを行いましょう!
SBIホールディングス ブロックチェーン推進室
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