TradFiとDeFiの融合には、R3とSolanaの連携が最適解であること
従来型金融システムの中では数十もの稼働中のブロックチェーンネットワークが存在し、数十億ドル規模の実世界資産(RWA)を管理しています。そして、それらを支えてきたR3が、5月にSolanaに進出すると発表しました。大局的な理由は明らかです。従来型金融(TradFi)は分散型金融(DeFi)と収束しつつあり、RWAトークン化のリーダーであるR3がその先陣を切るのは自然な流れだからです。とはいえ、私たちR3には数多くのパブリックブロックチェーンの選択肢がありました。したがって、問うべきは「なぜ収束なのか?」ではありません、それは自明です。真に興味深い問いは、「なぜR3はSolanaを選んだのか?」ということです。
技術選定を行うにあたり、私には3つの優先事項がありました:断片化の防止、理念の整合性、エコシステムの活力です。そして結論はこうです:私たちが必要とするスケーラビリティ、文化、コミュニティを兼ね備えているのはSolanaだけでした。要約すればそれが答えですが、詳細には重要な意味があります。以下で説明しましょう。
断片化を防ぐ
R3のCTPOとしての出発点は、プライベートブロックチェーンでの自らの経験、そして断片化の問題でした。
Cordaエコシステムは大きな成功を収めています。Cordaは世界の規制金融市場において、最も多くの本番稼働中ソリューションを支えており、100億ドル以上のRWAを扱っています。ですが、それぞれのプロジェクトは独自のネットワーク上で稼働しており、許可型エコシステムはまだその潜在力を完全に発揮できていません。アプリケーションや資産、データは別々のネットワークに散在しているのです。ビジネスやアーキテクチャ的な理由はありますが、この「バルカン化」は成長を阻害し、流動性を閉じ込めてしまいます。
そこで第一の優先事項は、Cordaネットワークを本当にひとつに結びつけ、相互運用性やコンポーザビリティを解放し、更なる成長を実現できるパブリックプラットフォームを見つけることでした。つまり、断片化に陥らないエコシステムが必要だったのです。1つのレイヤーで問題を解決しても、別の場所で再発するのでは本末転倒です。レイヤー2、ロールアップ、サイドチェーンは断片化の解決策ではありません。必要なのは、全員が利用でき、需要に応じてスケールし、コストとレイテンシを低く抑えられる単一の共有ネットワークです。したがって、TradFiとDeFiの収束の長期的な未来は、スケーラビリティと低コストを重視するコミュニティによって支えられる技術に基づくべきだと結論づけました。
哲学的な整合性
次に注目したのは文化と哲学です。このスケーラビリティと低コストへの注力が今後も持続するかどうかを確かめる必要がありました。そのためには、プロジェクトを主導する人々を突き動かす究極の目的を理解しなければなりません。
Solanaにおいて私が見つけたのは、「速く、安くする」という唯一のビジョンに徹底的に集中するエンジニアのコミュニティでした。その姿勢は「IBRL(Increase Bandwidth, Reduce Latency=帯域を増やし、遅延を減らせ)」というミームにも表れています。
一部のプラットフォームがニッチな学術研究や政治的アジェンダを優先するのに対し、私たちが金融業界を未来へ導くには、ビジネスのニーズに徹底的かつ率直に根ざす必要があります。そのためには、選ぶブロックチェーンが長期的にどう進化するのか、明確な見通しが欠かせません。その根底にはリーダーシップの動機とインセンティブがあり、Solanaの場合は「帯域を増やし、遅延を減らす」。これこそがインターネット資本市場の繁栄へ至る道筋なのです。
エコシステムの活力
3つ目はエコシステムです。正直に言えば、最終的な推奨に自信を持つまでに最も時間をかけた部分です。技術的な読者には周知の通り、Solanaのスマートコントラクト(いわゆる「プログラム」)はRustで書かれるのが一般的で、SVM上で動きます。この点が問題になり得ると私は懸念しました。Ethereumベースの技術「SolidityやEVM」は新規開発の「事実上の標準」とよく言われます。RustはSolidityではなく、SVMはEVMではありません。
過去5年間、なぜCordaがEVMやSolidityを採用していないかを顧客候補に辛抱強く説明してきた私には、非技術系の相手に技術的な選択を正当化する難しさがよく分かります。ビジネスの観点から言えば、「説明している時点で負け」なのです。
だからこそ、SolanaのRustとSVMの選択が同じ問題を引き起こさないと確信する必要がありました。
結論から言えば、まったく問題ではなく、むしろ利点でした。その理由が非常に興味深いのです。
まず事実として、Rust+SVMはSolidity+EVMより客観的に優れています。例えばプログラムをステートレスにする設計判断は、Solanaが高いスケーラビリティを実現している鍵です。ただしここで細かい理由を繰り返すつもりはありません。「説明=敗北」ですから。
代わりに、過去5年間に人々がなぜEVMについて尋ねてきたのかを考えましょう。本質的には、技術的好みやアーキテクチャ分析の問題ではありませんでした。もっと複雑で洗練された理由、つまり、エコシステム、スキル、支援ネットワーク、流動性、コンポーザビリティに関する期待だったのです。EVMを問う顧客は、大規模で成長し続ける活発なエコシステムの一員になることで得られるメリットを求めていました。孤立した存在にはなりたくなかったのです。主要なウォレットやカストディサービスと接続でき、自分たちのトークンが主要DEXで受け入れられることを望んでいました。必要な人材や専門知識が見つかることも重要でした。要するに、主流の一部であることを確信したかったのです。
ここ数年、「EVM」はその簡単な代名詞だったわけです。そこで私がSolanaを評価するときの問いは、SolanaエコシステムもEthereumエコシステムと同様の特性を備えているか?というものでした。
答えは、間違いなくYESです。
信じられないなら、5月に開催された「Scale or Die」カンファレンスのたった2日間のコンテンツを見てください。動画を見る必要はありません、もちろんおすすめしますが。プレゼンターの所属に注目してください。ほぼすべての技術プレゼンが、異なる組織の優秀なエンジニアによって行われているのが分かるはずです。私はSolanaエコシステムが多様で、成長しており、自律的であることを確認したかった。そしてその通りでした。
考慮すべきデータポイント
Solanaのパーミッションレスかつスケーラブルなアーキテクチャは、その効率性と開発者アクセスの容易さに大きな役割を果たしています。それは最近の利用実績にも表れています。5月には、Solanaはすべてのレイヤー2やロールアップを合わせた以上の「実際の経済的価値」を処理し、市場シェアの44%を獲得しました。
R3はSolana上でTradFiとDeFiの融合をリードする
以上が大まかなストーリーです。TradFiをDeFiへと導き、新しい「インターネット資本市場」を築くためには、スケーラブルで低コストなパーミッションレス基盤が必要です。理念的な偏りのない長期的ビジョンも必要です。そして、活発なエコシステムも欠かせません。この3つをすべて満たすと胸を張って言えるのはSolanaだけです。私たちの協業は、機関投資家がDeFiにアクセスするための最も迅速かつ容易な方法になるでしょう。
だからこそ、CordaエコシステムをSolanaと提携させるという決断はとても容易だったのです。
<ご質問・ご要望の例>
- Corda Portalの記事について質問したい
- ブロックチェーンを活用した新規事業を相談したい
- 企業でのブロックチェーン活用方法を教えて欲しい 等々
SBI R3 Japan ビジネス推進部長
ソリューション(主に金融)の立案・設計
週の半分はカレーを食べてます(2年間インドで修行)、一押しのカレー屋は「よもだそば」