
M2M(Machine to Machine)が、IoT・AI・Edge AI の発展によってどのように変化し、「AI-to-AI」という新しい社会モデルへ発展しつつあるのかを理解できます。また、ブロックチェーン技術が、機械同士の信頼形成や自律的な経済活動にどのような役割を果たす可能性があるのかについて学ぶことができます。
はじめに
こんにちは、SBI R3 Japan Sales & Engineering 部に所属している Li です。前職ではバックエンドエンジニアとして、Java や C# を用いたアプリケーション開発に携わっていました。
私は現在、M2M(Machine to Machine)という概念に興味を持っており、簡単なデモを開発しています。機械に「自動でサービスを請求する能力」と「自動で支払いを行う能力」を与えることで、M2M から AI-to-AI へ向かう第一歩を形にする取り組みです。まだ小規模なデモではあるものの、Machine Economy や Autonomous Agent の未来を考える上で、一つの興味深い事例になると考えています。
次回の記事で、私が作成した簡単な M2M デモについて紹介させて頂く前に、本記事では、M2M について、自分なりの視点も交えながら整理してみました。
M2Mという「古くて新しい概念」
M2M という言葉自体は決して新しいものではない。むしろ、IoT という言葉が一般化する以前から存在していた古い概念だと言える。例えば、自動販売機が在庫不足を自動通知する仕組みや、ATM が障害情報をセンターへ送信するシステム、工場設備が稼働状況を自動的に共有する仕組みなどは、すべて M2M の代表例である。つまり M2M とは、本来「機械と機械が、人間を介さずに自動で情報をやり取りする仕組み」を意味していた。ただし、当時の M2M は非常に限定的な世界だった。通信の対象は特定の設備同士に限られ、システムも閉鎖的で、通信範囲も狭かった。そのため、M2M は長い間、産業機器やインフラ設備の一部で利用される「裏側の技術」として扱われてきたのである。
IoTがM2Mを世界へ広げた
しかし現在、その M2M が再び注目され始めている背景には、大きな時代の変化がある。AI、IoT、5G、クラウド、Edge AI──これらの技術が相互に結びついたことで、M2M は単なる「機械同士の通信」から、「機械同士が自律的に協調する世界」へ変化し始めている。かつて M2M は、機械がデータを送るための技術に過ぎなかった。しかし今、人々が議論し始めているのは、「機械が自分で判断する未来」であり、さらには「AI 同士が会話し、交渉し、経済活動を行う社会」そのものなのである。
M2M を語る上で避けて通れないのが、IoT との関係である。現在では M2M と IoT を同じ意味で扱う人も多いが、実際には両者には明確な違いがある。M2M の本質は「機械間通信」であり、比較的シンプルな概念だった。一方、IoT は「あらゆるモノをインターネットへ接続し、巨大なエコシステムを形成すること」に重点がある。初期の M2M は、工場や企業内部の閉じた環境で利用されるケースが中心だった。例えば、センサーが特定のサーバーへデータを送るといった、一方向的で限定的な通信が主流だったのである。しかし IoT の時代になると状況は大きく変わった。デバイスは単にサーバーへデータを送るだけではなく、クラウドへ接続され、AI に分析され、スマートフォンと連携し、他のデバイスともリアルタイムで情報共有するようになった。つまり IoT は、M2M に「世界規模の接続性」を与えたのである。
AIの登場によって変わり始めたM2M
IoT が M2M に与えた最大の変化は、「データ量」と「知能」の二つだったと言える。IoT によって膨大なデータが生成されるようになり、そのデータを AI が学習することで、機械は単に通信するだけではなく、自ら予測し、判断し、最適化するようになった。例えば現在のスマート工場では、設備が単に異常を通知するだけではない。AI が設備データを分析し、「この部品は二週間後に故障する可能性が高い」と事前に予測する。これは Predictive Maintenance(予知保全)と呼ばれる技術であり、現在では世界中の製造業で導入が進みつつある。つまり機械は、「指示を待つ存在」から、「自ら判断する存在」へ変わり始めているのである。
そして、この変化をさらに加速させているのが Edge AI である。従来、多くの AI 処理はクラウド上で行われていた。しかし、自動運転やロボットのようなシステムでは、クラウドの応答を待っていては遅すぎる。そのため現在では、AI を機械そのものに搭載し、端末側でリアルタイムに判断させる「Edge AI」が急速に発展している。これは M2M の世界において極めて大きな意味を持つ。なぜなら、機械が単に通信するだけでなく、「自律的に行動する」ようになるからだ。
「AI-to-AI」という新しい世界
実際、欧米では最近、「AI-to-AI」という言葉が少しずつ使われ始めている。これは、人間がインターネットを操作するのではなく、「AI が AI と直接やり取りする世界」を意味している。例えば将来的には、ユーザーが「大阪行きの最安チケットを探して」と AI に依頼すると、AI は複数のサービスの AI と自動的に交渉し、価格、空席、ポイント、時間、割引条件などを比較しながら、自律的に予約まで完了するかもしれない。そのとき、人間は細かな操作を一切行わない。つまりインターネットの主体が、「人間」から「AI」へ移り始める可能性があるのである。
この流れは、決して海外だけの話ではない。日本でも近年、「Society 5.0」という概念が国家戦略として推進されている。Society 5.0 は、AI・IoT・ロボット・ビッグデータを社会インフラへ統合し、「超スマート社会」を実現する構想である。その背景には、日本特有の深刻な社会課題がある。少子高齢化、労働人口減少、地方過疎化──こうした問題を解決するため、日本では「人間の代わりに機械が社会を支える未来」への期待が非常に大きい。現在、日本では自動配送ロボット、無人店舗、AI介護支援、スマート物流、自動運転実証、スマートシティなどの取り組みが各地で進められている。つまり日本は、M2M や AI を単なる技術ではなく、「社会基盤」として導入しようとしているのである。
しかし、その一方で、M2M が完全な形で実現しているとはまだ言えない。最大の問題は、「信頼」にある。もし未来で、機械同士が自律的に契約や決済を行うなら、「その機械は本物なのか」「データは改ざんされていないか」「AI の判断は信用できるか」といった問題が必ず発生する。現在の IoT の多くは、依然として AWS や Azure のような中央集権型クラウドに依存している。つまり、真の意味で「自律分散型」の M2M 社会はまだ存在していないのである。
ブロックチェーンはM2Mをどう変えるのか
そこで近年、再び注目され始めているのが ブロックチェーン である。一般的に ブロックチェーン というと暗号資産のイメージが強いが、本来の ブロックチェーン の価値は、「見知らぬ相手同士が信頼を形成できること」にある。これは M2M と非常に相性が良い。例えば将来的には、各機械が分散型ID(DID)を持ち、Smart Contract によって自動契約を行い、自律的に決済を実行し、取引履歴を改ざん不可能な形で保存する、といった世界が実現するかもしれない。実際、欧州ではすでに「Machine Economy(機械経済)」という概念が議論され始めている。電気自動車が充電後に自動決済を行い、ドローンが空域利用料を自律的に支払い、工場設備が必要な部品を自動発注する。こうした世界では、「経済活動の主体」が人間だけではなくなる。AI や機械そのものが、社会のプレイヤーとして振る舞い始めるのである。
M2Mの先にある未来
もしこの流れがさらに進めば、未来のインターネットは、「人間同士のネットワーク」ではなく、「機械同士が協調する巨大な社会基盤」へ変化していくのかもしれない。そして振り返ってみれば、その出発点は、何十年も前から存在していた「M2M」という概念だったのである。
また次回の記事では、実際に作成した M2M デモの内容について紹介する予定である。
今回の記事で整理した内容が、実際にどのような形で動作するのかを、簡単なプロトタイプを通して見ていきたい。
<ご質問・ご要望の例>
- Corda Portalの記事について質問したい
- ブロックチェーンを活用した新規事業を相談したい
- 企業でのブロックチェーン活用方法を教えて欲しい 等々
SBI R3 Japan セールス・エンジニアリング部所属
アプリケーション開発/PoC支援を担当しています
ブロックチェーン技術が将来必ず普及すると信じています!
